ぶり返すこころの不調。元通りの自分に戻ることはできないのか。
「ゆううつ」や「不安感」、「落ち込み」、、
こうした心の不調は、一度回復してもしばらく経って症状がぶり返してしまうことも少なくありません。
何度も回復と再発を繰り返し、気がつけば何年も経ってしまうこともあるのが心の不調の怖さでもあります。
こうした再発を繰り返していると、「もう元の自分に戻ることはできないかもしれない」「完治することは難しいかもしれない」と思ってしまうものです。
ここでは、繰り返す心の不調はなぜ起きるのか?原因や予防法、新たな自分を見つける方法などをご紹介します。
この記事の目次
繰り返す心の不調に悩まされる人は多い
心の不調をなんらかの治療法で改善できたとしても、時間が経つと再発してしまうことがあります。
また、心の不調はたとえ検査をしても数値で現れることはなく、「完治」という概念もあいまいなものです。
ですから、治療を試みて症状が軽くなったり、まったく出なくなっても「治った」と考えるよりも「~ヶ月、~年症状が出ていない」と思う方が良いのかもしれません。
とくに職場の人間関係や、夜勤、過度な残業などの仕事ストレスが原因で何らかの不調を抱えた場合、症状が軽くなったからといって元の生活に戻ってしまうと、たちどころに再発してしまうものです。
これはうつ病や不安障害なども同じですが、自律神経失調症もまた症状を繰り返して悩む人が多いというのが実情です。
心の不調がぶり返す原因
心の不調がぶり返してしまうのにはいくつかの理由があります。
つらい症状が出なくなっても、常に意識して生活習慣や心の状態を監視しておくことが大切です。
次のような要素には特に注意が必要です。
ストレスが多い環境
心の不調の多くは「ストレス」が原因で起こります。
ストレスの怖いところは、一つ一つが軽いものであっても、いくつも重なったり長期間受け続けると心を不調を抱えてしまう原因になるところです。
とくに職場や家庭環境の中でのストレスは慢性化しやすく、また自覚しずらいものです。
緊張しやすくなった、漠然とした不安やゆううつを感じるようになった、といった症状は心身に何らかの支障が起きているサインです。常に自分が受けているストレスレベルをチェックし、こまめに解消することが大切です。
薬の影響
心の不調を病院の薬で治療している人も注意が必要です。
よく、心の不調に悩んでいた人が精神科や心療内科を受診し、治療薬を処方してもらって飲み始めると「症状が改善されて楽になった、これで大丈夫」と安心してしまうことがあります。
しかし、抗不安薬や抗うつ剤・睡眠導入剤といった薬を飲んでも病気の根本的な原因が解消されるというわけではなく、あくまで”症状を和らげているだけ”だという捉え方をしなくてはなりません。
しばらく薬を飲んでたとえ調子がよくなっても、勝手に断薬や減薬してしまうと元の症状がすぐに表れてしまうことがありますので注意が必要です。
生活習慣
「生活習慣」は、心の不調に一度かかった人が最も注意しなくてはならない要素です。
- 睡眠不足・睡眠状態の悪化
- 栄養状態の悪化
- 運動不足
とくにこ3つの要素に注意をしましょう。
これらは、不調のぶり返しの原因として陥りやすいものです。
また、大きなストレスや悩み事などが見当たらないのに不調がなかなか治まらないようなときも、これらの生活習慣の乱れが原因であることが多いようです。
現在日本が「ストレス社会」と呼ばれ、多くの人が精神・自律神経の不調をうったえる現状にも、この生活習慣の乱れが深く関係しているという専門家の指摘もあります。
季節、時期も影響する
自律神経は、人間の心と体を変化する環境に適応させる役割をもちます。
ですから、環境が変化するときには自律神経も切り替わる性質があるのです。
たとえば「夜から朝へ」とか「冬から春へ」といった時間と環境の変化時に、自律神経の状態が大きく変化します。
よく春先にはうつ病患者が増えるということが言われていますが、これも季節の変化に自律神経が対応しようとし、その際に不安定になることも理由となっています。
一度自律神経失調症になった人ならば、健康な人よりも、季節・時期には慎重になる必要があるでしょう。
不調のぶり返しや再発を防ぐ習慣
心の不調を繰り返してしまうと、慢性化してしまうことで精神的にも治療を諦めてしまう原因にもなりかねません。
一度治療して状態が改善されたら、ぶり返さないように以下のような予防法で手を打っておくことが大切です。
生活習慣(睡眠・運動・食事)を正す
自律神経失調症の再発を防ぐためには、規則正しい生活を心がけることが基本です。
- 1)睡眠不足を防ぎ、質の高い睡眠をとる工夫をする
毎日眠る時間と起きる時間を一定にし、寝だめなどをしないことが大切です。
また、枕や布団などの寝具を快適なものに変える工夫も必要です。
そして、最近問題になっている、「パソコン・スマホ」を睡眠直前にまで使用しないことや、眠る直前に食事や飲酒をしないことなど、睡眠の質を高める努力をしましょう。
参考:質の高い睡眠をとって免疫力を高めることが自律神経失調症の改善につながる
- 2)軽い運動を取り入れる
心の状態にも大きな影響を与える「自律神経」は、人の運動器官とも密接なつながりがあり、運動不足そのものが調子を崩す引き金にもなります。
運動不足を解消するためにおすすめなのは、「ウォーキング」や「ジョギング」などの軽めの有酸素運動です。
軽めの有酸素運動は、呼吸筋を動かすことで自律神経を強く刺激することができ、自律神経の固着を防ぐことにもつながります。
3)栄養バランスの取れた食事を心がける
「食事」は心身の健康に不可欠な要素です。
私たちが普段食べている食事には、精神と体・自律神経を強くしてストレスに強くするような栄養素がたくさん存在します。
とくに自律神経の健康に大切な栄養素は以下です。
- アミノ酸(必須アミノ酸・トリプトファン・ギャバなど)
- ビタミン類(ビタミンB群・E・Cなど)
- ミネラル類(鉄や亜鉛・カルシウムなど)
- 抗酸化物質(ポリフェノールやクロロフィルなどストレスによる体細胞の酸化を食い止めてくれるもの)
忙しい生活をしていると、インスタントやレトルト食品、あるいはファーストフードやコンビニ食などに頼りがちですが、この悪習が不調のぶり返しの原因になりやすいということを覚えておきましょう。
参考:食生活を見直して自律神経失調症を改善する│セロトニンを増やす栄養素と食事方法
ストレスケアを怠らない
自律神経失調症の直接的な原因となる「ストレス」は、一つ一つのものが小さいものであったとしても油断は禁物です。
ストレスは蓄積していく性質があり、ちゃんとケアして解消しないと膨らんでいつか心身に不調をきたすことになります。
”ストレス”に関してはこのように考えましょう。
- ストレスは毎日溜まっていく「マイナス貯金」である
- マイナス貯金が限界にまで達することで自律神経失調症や不安障害などの精神障害が起きやすくなる
- マイナス貯金が溜まらないようにするには日々のストレスケアが大切
ストレスを効果的に解消する方法は以下のようなものがあります。
〈おすすめのストレス解消法〉
- 睡眠前の半身浴
- ハーブティー
- アロマテラピー
- ヨガ・座禅
- 趣味の時間を過ごす
- ハイキングなどのアウトドアアクティビティ
”ストレス解消”といっても人それぞれで、大切なのは「自分がやってみて心地よいものを探す」ということです。
ストレス解消法にもたくさんの種類がありますが、まずはできることから積極的に試してみることをおすすめします。
-ストレス解消・リラックス法-
自律神経失調症の改善にハーブティーが効果的な理由とおすすめ商品
自律神経失調症の改善のために瞑想が役立つ5つの理由。メリット・効果・やり方まとめ
ストレスの根本を変える努力
前述したように、ストレスは「マイナスの貯金」を生み続けます。
それが限界に達しないように、ストレス解消法を積極的に取り入れ、日々のストレスをうまく相殺させることが大切です。
ここでさらにステージを上げるために、マイナスの貯金そのものを生み出さないために「ストレスの根本を変える」努力もしてみましょう。
ストレスの多くは、その人の”ものの捉え方”によって生まれます。
同じ残業をするのでも、「よし、これを頑張れば先につながるぞ!」と意気揚々と行動する人ならば精神的なストレスはほとんど受けませんが、「なぜ自分だけがこんな辛い思いをするんだろう・・・」とネガティブに捉えてしまうと大きなストレスになります。
次のような考え方の度合いが強すぎると、日常生活でストレスの根本を作り出しやすいと言えます。
- 物事をネガティブに捉えてしまう
- 物事を完璧にこなさないと気が済まない(融通がきかない)
- 周囲の人に認められたい(承認欲求が強い・自分の評価が気になる)
- 神経質で小さなことにも敏感に反応してしまう
- 他人の顔色が気になる
- 頼まれごとをされると断ることができない
- 他人のことが信用できずに警戒してしまう
- 自分のことを噂されているのではないかと疑ってしまう
こういった考え方の偏りがあると、毎日自分自身でストレスを生み出してしまうことになります。
その根本的な自分の性質を変える努力をしていくことで、全体的なストレスの量を格段に減らしていくことができます。
参考:神経質で敏感な性格は仕事ストレスを抱えやすい。改善するためにできること
参考:不安や憂鬱の取り除き方│不平不満や愚痴をやめ、感謝を口にする
元通りを目指すのではなく、『新たな自分を目指す』ことが大切
一度心の不調に悩まされると、他の病気と同様に「元通りに治す」ことを望むはずです。
しかし、完璧に元の自分に戻るまでには長い月日がかかることも多く、また完璧に戻そうとすること自体がストレスになってしまう危険性も否めません。
元の自分に戻ることに意識を向けるのではなく、「新たな自分を目指す」という意識で再出発すると気持ちは遥かに楽になるでしょう。
また、著名な人たちが過去のことを話されるとき、自律神経失調症やうつ病などの経験者が多いことに驚かされます。そういった方たちは、苦悩の中で自分自身と向き合い弱点を克服してきているのです。
そうすることで、精神疾患になる以前よりも自分を”バージョンアップ”することに成功しています。
まさにことわざにある「七転び八起き」そのままの好例ですね。
「元に戻す」という修復を目指す考え方よりも、「以前よりも成長する」という考え方を目指すことをおすすめします。
こころの不調は、原因も進行の仕方も明確ではなく、複雑な要素が絡み合うために治療も難しいものです。
しかし、「辛い状況を乗り越えれば以前よりも強くなった自分がそこにいる」と思うことができれば、克服までの道のりは大きく近づくはずです。
〈まとめ〉
- こころの不調は再発を繰り返しやすい性質がある
- ストレスの多い環境ではこころの不調をぶり返しやすい
- 薬は正しく扱わないとこころの不調がぶり返すこともある
- 季節や時期でもこころの不調がぶり返すことがある
- こころの不調の再発を防ぐには生活習慣(睡眠・運動・食事)を正す、ストレスケアをする、ストレスの根本を改善するということが大切
- 元通りの自分を取り戻すのではなくバージョンアップした自分を目指す方が良い結果になりやすい