生まれつきや遺伝で自律神経失調症になるのか?
精神疾患をわずらい病院を受診すると、問診の際に「家族に精神病患者はいるか?」といったような質問をされることもあるようです。
これは、精神病医学の研究によって「精神病が遺伝する可能性がある」という統計があるからなのです。
「自律神経失調症」もまた精神病の一種として分類されることもあり、同じように「遺伝」によって発症するのではないか、と考える人も多いようです。
ここでは、「自律神経失調症と遺伝」の関係について深く掘り下げてみました。
この記事の目次
生まれつき自律神経の働きが弱いケース
自律神経失調症は、精神的要因からも発症することが多いため、精神病と同類とされることもありますが、正しくは同じものではありません。
”自律神経”というのは、肉体的な器官の一つであり、精神的な要因以外からも影響を受けるものです。
内蔵の病気などでは「生まれつき弱い」ということがよくありますが、これは遺伝ではなく、母親の妊娠中の栄養状態や体調などが関係するようです。
自律神経は、生まれつき働きが弱いことがあり、成長途中で自律神経失調症を発症するケースもあります。
親からの遺伝で自律神経失調症になることはあるのか
「自律神経失調症と遺伝」には、明確な関係性はないと考えられています。
統計を見ても、疑われるのはほんの「数パーセント」ですから、誤差の範疇であるともいえます。
ただし、子供は親を見て育ち、親の「性格」「習慣」などがそのまま受け継がれることが多いものです。
親が穏やかな性格であれば、子どももたいていおだやかになりますし、神経質であれば、子どもも影響されるケースがあります。
成人して自らの経験の中で、子ども自らが考え方に革命を起こさないのであれば、親の価値観がそのまま引き継がれるのです。
自律神経失調症は、「性格」や「モノのとらえ方」、「生活習慣」などによってかかりやすさが違ってきます。
遺伝子レベルでの遺伝はなくても、こういった生活環境の中で親の影響を受けることで、親が自律神経失調症になりやすい人ならば、その子どももまた”間接的に遺伝”してしまうことは考えられるでしょう。
自律神経失調症になりやすい人とは
子どもが親に似ることで、親がもつ自律神経失調症になりやすい要因までも引き継いでしまうとしたら、いったいそれはどういったものなのでしょうか?
「性格」「生活習慣」「環境」に分けて見てみましょう。
性格
厳格な性格を持つ人は、自律神経失調症になりやすいといわれています。
「完璧主義で思った通りにやらなければ気が済まない」「神経質」「責任感が強すぎる」という性格の持ち主は少し注意が必要です。
神経質で、細かなところにまで注意が行くことは良い面もありますが、これは「失敗への恐怖」が原動力になっていることが多く、つねに自ら作り出した”ストレス”にさいなまれている状態だともいえます。
自律神経失調症は、ストレス過多な生活を続けることで精神と神経の許容量を超えることで発症しますが、反対に、少しルーズで「楽天的」な性格の人には自律神経失調症の人が少ないといわれています。
生活習慣
自律神経失調症は、「生活習慣の悪さ」によっても発症することが分かっています。
この生活習慣こそが、最も自律神経失調症の「間接的遺伝」を起こしやすいものだといえるでしょう。
悪影響を及ぼす生活習慣には大きく「2つの要素」が考えられます。
一つは「食生活」です。
子どもは成人するまでは親の作ったもの、また家にあるものを食べて生活します。ですから、食生活こそが親の影響を受けやすく、親が偏食気味ならば、子どもも偏食傾向になるのは当然です。
食べ物の中には、健康な精神状態を保つために必要な「アミノ酸」「ビタミン・ミネラル」「抗酸化物質」などがあり、これらを親がバランス良く摂っていないと、子どもの食の好みも同じようになってしまうのです。
摂取するものを変えるだけで不思議なくらいに体調が大きく変化することもありますので、一度試してみることをおすすめします。
参考:食生活を見直して自律神経失調症を改善する│セロトニンを増やす栄養素と食事方法
もう一つは「生活リズム」です。
夜更かしをしたり、就寝時間がまちまちであったり、睡眠リズムが乱れた生活をすると、自律神経失調症になりやすいといわれています。
睡眠は心身の不調を整えるためのものですから、熟睡しずらい生活リズムをしていると自律神経にも悪影響が及んでしまいます。
参考:質の高い睡眠をとって免疫力を高めることが自律神経失調症の改善につながる
環境
「自律神経失調症になりやすい環境」もあります。
それは、「人間関係がうまくいっていない」「経済的な悩みを抱えている」、「過労気味な毎日を過ごしている」といったものです。
幼少期に両親の仲が悪く、大声でケンカばかりしていたり、経済難で生活が不安定な場合など、子どもは多くのトラウマを抱えることになります。
これらの悪い環境は、慢性的なストレスを感じるようになり、自律神経失調症を経て不安神経症、うつ病、パニック障害などの進行してしまうリスクの高い状態だといえます。
緊張感や不安感というのは、人間の記憶と習性に深く刻まれてしまうので、争いごとの多い家庭や、人間関係が希薄な家庭で育った子供は、成長してからもストレスを作り出しやすい性質になってしまう可能性が高まるようです。
「自律神経失調症と遺伝」には直接的な関係性は認められませんが、”間接的”に親の性格や生活態度などが影響することで、親子2代で受け継がれてしまう可能性はあるでしょう。
しかしこれには「努力をすれば克服できる」可能性も残されています。
自分の中にある、自律神経失調症になりやすい要素を発見し、それを修正すれば予防も可能になります。
参考:治すための考え方・捉え方
〈まとめ〉
- 生まれつき自律神経の働きが弱く発症してしまうこともある
- 「自律神経失調症と遺伝」は直接的な関係はないといえる
- 完璧主義・神経質・責任感が強い性格は自律神経失調症になりやすい
- 食生活や睡眠状態などの生活習慣が悪化している人は自律神経失調症になりやすい
- 人間関係のトラブルや悩み・過労気味な人は自律神経失調症になりやすい