自律神経失調症とパニック障害の違いや併発する可能性について

ストレスなどの理由で起きる神経疾患に「自律神経失調症」「パニック障害」があります。

ストレス社会といわれる現在の日本において、右肩上がりで増えている症状です。

すぐに生死に関わるような症状ではありませんが、場合によっては仕事や生活スタイルを変えなければいけなくなるほどの症状に発展する可能性もあります。

ここでは、そんな自律神経失調症とパニック障害の違いや、それらが併発する可能性などをまとめてみます。

自律神経失調症とパニック障害はどう違うのか

自律神経失調症とパニック障害は、医学的には明確に分類されています。

まずはそれぞれがどういった性質を持つものかを確認しておきましょう。

自律神経失調症とは?

「自律神経失調症」は、ストレスや食生活・生活習慣の悪化などが原因で、交感神経と副交感神経のバランスが崩れる症状をいいます。

自律神経は全身の生体機能の働きに関与(呼吸・血流・筋肉の動き・消化と代謝・排泄・睡眠・新陳代謝など)するため、そのバランスの狂いによってさまざまな症状が現れます。

自律神経失調症の症状は「不定愁訴(致命的ではないが不調を感じる)」と表現されます。慢性的で広範囲に及ぶ苦痛が、長期間続くのが特徴です。

パニック障害とは?

突然不安感や「死ぬかもしれない」という考えに襲われてパニック発作を起こし、それが癖づいてしまう状態が「パニック障害」です。

パニック障害は”脳機能障害の一つ”と考えられていて、興奮を抑える脳内ホルモン「セロトニン」が極端に不足することが原因とされています。

呼吸困難と強い不安感が伴いますが、検査をしても肉体的な原因は発見されません。

「また発作が起きるかもしれない」というトラウマ自体が発作を誘引するという悪循環を生む特徴があります。

この前兆を「予期不安」といいます。

また、発作が起きた場所や、それに似た環境を極端に恐れる「広場恐怖症」もパニック障害特有の症状です。発作が起きる前兆時以外はとくに生活に支障が現れるような不快症状はありません。突発的な症候群だといえます。

このように自律神経失調症とパニック障害は、不安を感じたり、発汗、呼吸困難など似たような症状もありますが「慢性的」「突発的」という大きな違いがあります。

自律神経失調症からパニック障害は併発する可能性がある?

自律神経失調症とパニック障害に共通する症状には、「不安感」「緊張感」というものがあります。

こういった症状が体に現れているとき、脳内では「ノルアドレナリン」という、ストレスに深いつながりがある神経伝達物質が活発になっています。

ノルアドレナリンが活発になりすぎることで、平常心を保つための神経伝達物質であるセロトニンが多く消費されると、自律神経失調症もパニック障害も悪化しやすくなると考えられています。

もともと発作の症状がない自律神経失調症でも、悪化すればパニック発作を起こすことはありますし、反対に突発的な症状が特徴のパニック発作であっても、広場恐怖症になって外出や他人と触れ合うことを怖がったりすると、症状の慢性化が起こり自律神経失調症になることがあります。

実際に両方の症状で苦しむ人に、2つの疾患を併発している患者は多くいるようです。

これらに不安神経症(全般性不安障害)や不眠症などが合わさって、いったいどれが本当の原因なのか判別がつきにくくなるということも、精神疾患・神経障害の怖さだといえるでしょう。

日常で起きやすいパニック障害の具体的な症状

パニック障害の発作は、日常のあらゆる場面・状態で起こります。

たいていは「大きなストレスを抱えた状態」が原因です。

借金苦や事故、身内の不幸、人間関係の悪化、失業など精神的に追い詰められたような状態が続き、”ストレスの潜伏と蓄積”が続きます。そしてある日突然「パニック発作」を起こすのです。

パニック障害の症状は以下のようなものになります。

  • 「死ぬのではないか?」「自分はどうにかなるのではないか?」という強い不安を突然感じる
  • 大量に発汗する
  • 動悸が激しくなる(心臓の音が大きく感じる)
  • 呼吸困難に陥る
  • 胸に強い圧迫感、喉、気道の詰まりを感じる
  • めまいがする

 

こういった症状が約15分~30分間続きます。ただし、パニック障害であればこのまま放置していても死に至るようなことはなく、時間が経てば症状が消え去るのがふつうです。

また、発作を経験した人すべてが「パニック障害」につながるわけではありません。パニック障害として進行してしまう人は、このときの経験がトラウマとなり、「またあの発作が起きるのではないだろうか?」と記憶に焼き付いて何度も繰り返してしまうことです。

はじめての発作からパニック障害へと進行すると、以下のような状態に恐怖感を感じるようになるといいます。

  • 公共の場(デパート・駅・電車の中・銀行・学校・職場など)
  • 狭い場所(エレベーターの中・狭い部屋・密閉された空間など)
  • 暗い場所、状況(就寝前の自宅・薄暗い部屋や施設など)
  • 一人で行動しているとき

 

発作が起きたときに「逃げられない」「どうすることもできない」という状態は、パニック障害患者の苦手とする場所です。

環境を大きく変えることが克服のカギ

パニック障害を発症してしまうと、職場にも行きづらくなって休職したり、場合によっては退職してしまうこともあるようです。たいていは外出を嫌い、家の中に「引きこもる」状態になりやすくなります。

しかし、家にずっと引きこもっている状態ではパニック障害はいつまでたっても治らないどころか、さらに病状が進行し、”うつ病”へと悪化してしまう恐れもあります。

パニック障害の治療には「環境を大きく変えることが大切」だといわれています。

パニック障害に有効とされる精神科の治療として有名なのが「暴露法(エクスポージャー法)」です。

これは、苦手と感じる場所や状況に、少しづつ近づいて恐怖感を打ち消すために”慣らしていく”という治療法です。そして、暴露法ではより多く外出し、できるだけ「活動的な生活」をすることを推奨します。

自宅周辺で、発作が起きてもすぐに帰宅できる距離を毎日散歩したり、可能であれば同伴者を伴って少し遠距離にまで足を伸ばしたりします。

カフェに入ったり、ショッピングをしたり、少しづつ活動の範囲を広げていくのです。

家に閉じこもってばかりいると、目に見えない不安と小さなストレスを溜め込むことになりますから、多少不安があってもできるだけ外出することを習慣にすることが大切です。

人間は他の動物と同様に、じっとして体を動かさないことでも徐々にストレスが蓄積するといいます。

積極性を取り戻すことが、パニック障害克服のカギとなるのです。

 

日々多くのストレスに囲まれて暮らす現代人は、精神的な強さに関係なく、誰でも自律神経失調症やパニック障害を発症する可能性があるといえます。

自分ではなく、家族や知人がこういった精神疾患に突然かかってしまうこともありますので、こういった予備知識を知っておいて損はないでしょう。

この記事のまとめ

  • 自律神経失調症とパニック障害は医学的に明確に分類されている
  • 自律神経失調症は慢性的なストレス障害
  • パニック障害は突発的な脳機能障害
  • パニック障害は(動悸・呼吸困難・発汗・不安・恐怖感)といった症状が起きる
  • 自律神経失調症とパニック障害は”併発”することもある
  • パニック障害の治療では「生活を活動的」にすることがカギとなる


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