自律神経失調症で処方される薬や効果、副作用
ここでは、自律神経失調症の患者に処方される一般的な薬名や効果、副作用をご紹介します。
まずは薬物療法でつらい症状をなくすことから始めるでも書いているとおり、自律神経失調症を改善させるために病院でまず行われるのは、『薬による症状緩和』が一般的です。薬によって「自律神経失調症を治す」というものではなく、あくまで「今出ている症状を緩和し、悪化を防ぐ」のが狙いです。
病院でどんなで薬が処方されるかは、基本的にその人の症状によって変わります。また、病院や医師によっても多少の違いがあるようです。
病院ですでに何等かの薬が処方されている場合は、副作用や依存に注意が必要があるでしょう。
薬にどんな効果があるかだけではなく、効き目の強さやそれに伴うリスクも事前に知っておくことが大切です。
この記事の目次
処方される薬の種類
自律神経失調症の患者に用いられる薬は、以下のような種類に大きく分けられます。
- 抗不安薬(精神安定剤)
- 自律神経調整薬
- 自律神経抹消作用薬
- 抗うつ薬
- 睡眠誘導薬
- ビタミン剤
- ホルモン剤
- 漢方薬
それぞれの薬名と期待できる効果、副作用
抗不安薬(精神安定剤)
自律神経失調症による症状の中でも多いのが、不安感や緊張、動悸です。
この症状を和らげるために処方される薬が『抗不安薬』と呼ばれるもので、自律神経失調症に用いられる薬の中で最も多く使われています。
この類の薬は、脳の一部に作用し、不安感や胸のつかえを取り除き、体の緊張をほぐしてリラックスさせる効果があります。
そのため、度重なるストレスによって体がこわばっている場合や、憂鬱状態にもよく使われる薬です。
抗不安薬の薬名と効き目の強さ
- セレナール(オキサゾラム)・・・効き目:穏 作用時間:短
- ハイロング(オキサゼパム)・・・効き目:穏 作用時間:短
- メイラックス(ロフラゼペート)・・・効き目:中 作用時間:長
- セダプラン(プラゼパム)・・・効き目:中 作用時間:長
- コントール(クロルジアゼポキシド)・・・効き目:中 作用時間:長
- セルシン(ジアゼパム)・・・効き目:中 作用時間:長
- レスミット(メダゼパム)・・・効き目:中 作用時間:長
- コレミナール(フルタゾラム)・・・効き目:中 作用時間:短
- メンドン(クロラゼプ酸二カリウム)・・・効き目:中 作用時間:長
- デパス(エチゾラム)・・・効き目:強 作用時間:短
- レキソタン(ブロマゼパム)・・・効き目:強 作用時間:長
- セパゾン(クロキサゾラム)・・・効き目:強 作用時間:長
- ワイパックス(ロラゼパム)・・・効き目:強 作用時間:中
- レスタス(フルトプラゼパム)・・・効き目:強 作用時間:長
抗不安薬の副作用とは?
上記の抗不安薬には、比較的軽度の副作用が起こることがあるといわれています。
抗不安薬の副作用として多い症状は「ふらつき」や「眠気」などです。これは薬の作用によって筋肉の緊張がほぐれたことによるものがほとんどのため、それほど気にするものでもないようです。
ただ、体質によってはこれらの副作用が強く出る場合もまれにあるようです。
また、他の薬と併用して飲んだり、コーヒーやアルコールと服用すると効果が半減してしまうばかりか、ひどいときには運動障害などの異変が起こることもありますので注意しましょう。
薬以外でできること
自律神経調整薬
自律神経調整薬が処方されるのは、「自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが乱れやすい体質の人」が対象です。
ここでいう「自律神経のバランスが乱れやすい人」というのは、生まれつき体調を崩しやすい体質の人(本態性型自律神経失調症と呼ばれる)をいいます。
また、自律神経失調症とみられる症状が比較的軽い場合も処方されます。
この薬が視床下部(自律神経の中枢)に作用し、自律神経のバランスを改善します。
自律神経調整薬の薬名と効き方、副作用
- ハイゼット(ガンマオリザノール)・・・更年期障害による冷え性やのぼせを緩和。軽度の動悸や発汗にも処方される。
- グランダキシム(トフィソパム)・・・緊張や興奮による肩こりや頭痛を緩和
副作用については比較的穏やかなものが多いですが、「かゆみ」「ふらつき」「吐き気」「眠気」などが起こる場合があるといわれています。
自律神経末梢作用薬
自律神経末梢作用薬は、以下の3つの種類があります。
- 「βブロッカー」
- 「副交感神経遮断薬」
- 「交感神経興奮薬」
それぞれ作用の仕方が違い、医師の診断によって使い分けられます。
βブロッカーの薬名と効き方、副作用
インデラル(塩酸プロプラノロール)・・・心臓を休ませて血圧を下げる働きがあるため、主に緊張や不安、動悸を感じる方に処方されます。服用後1時間前後で効き始め、3時間ほど効果が持続します。副作用は「めまい」や「ふらつき」などの軽度なものですが、ぜんそくや低血圧の方は使用できませんので注意が必要です。
「副交感神経遮断薬」の薬名と効き方、副作用
ブスコパン(臭化ブチルスコポラミン)・・・けいれんを抑えたり胃酸の分泌を抑える作用があり、胃痛や下痢などの症状緩和に用いられます。副作用は「便秘」や「頭痛」などです。
「交感神経興奮薬」
リズミック(メチル硫酸アメジニウム)・・・交感神経を亢進させることでノルアドレナリンを増加させ、血圧を上げます。「めまい」や「立ちくらみ」の緩和に用いられます。副作用としては「動悸」や「頭痛」などです。高血圧、バセドウ病、前立腺肥大、狭隅角緑内障の方は使用できません。
薬以外でできること
抗うつ薬
抗うつ薬は、抗不安薬で十分な効果が得られないときや、抑うつ感を改善する際に用いられる薬です。
主に「落ち込み」や「不安感」、「イライラ」の解消に使われます。
効果を感じるまでの日数は、おおむね1週間ほどかかることが多いようです(個人差があります)。
薬を飲むのを忘れたり止めたりすると本来の効果が発揮されないかりか、離脱症状として「頭痛」や「吐き気」などの症状が出ることがありますので注意しましょう。
また、薬を飲み続けることで抑うつ気分が解消されてきても、再発リスクを避けるため服用を止めずに一定期間飲み続ける必要があります。
抗うつ薬の種類
抗うつ薬は、主に以下の5種類に分類されます。
- 三環系
- 四環系
- SSRI
- SNRI
- NaSSA
【三環系】 薬名や効き方、副作用
- トリプタノール(アミトリプチリン)
- アモキサン(アモキサピン)
- アナフラニール(クロミプラミン)
- トフラニール(イミプラミン)
「抑うつ気分」や「不安感」を解消する効果があります。副作用としては、「眠気」、「ふらつき」、「便秘」などが挙げられます。
【四環系】 薬名や効き方、副作用
- ルジオミール(マプロチリン)
- テシプール(セチプチリン)
- テトラミド(ミアンセリン)
「抑うつ気分の解消」、「やる気を高める」などの効果があり、副作用が少ないのが特徴です。
【SSRI】 薬名や効き方、副作用
- ルボックス(フルボキサミン)
- パキシル(パロキセチン)
「抑うつ気分の解消」、「強迫性障害の治療」に用いられます。「吐き気」や「眠気」などの副作用が起こる場合があります。
【SNRI】 薬名や効き方、副作用
- トレドミン(ミルナシプラン)
「抑うつ気分の解消」、「強迫性障害の治療」、「不安感の解消」などに用いられます。「便秘」「ふらつき」「眠気」などの副作用が起こる場合があります。
【NaSSA】 薬名や効き方、副作用
- リフレックス(ミルタザピン)
「抑うつ気分の解消」、「不安感の解消」、「食欲の改善」に用いられます。副作用として、「太りやすくなる」「眠気」などが挙げられます。
睡眠誘導薬(睡眠薬)
「寝つきが悪い」「熟睡できない」「早朝に覚醒してしまう」といった症状に悩まされる方は非常に多いです。
こうした睡眠障害のやっかいなところは、眠れないことに対する不安やストレスが、他の症状も招いてしまう危険性があるということです。また、うまく眠れず睡眠不足になることによって、不安や緊張を感じやすくなるといったリスクもあります。
こういった悪循環を断ち切るために用いられるのが、「睡眠誘導薬」です。
睡眠誘導薬の薬名と作用時間、副作用
作用時間:短
- マイスリー(ゾルピデム)
- ハルシオン(トリアゾラム)
- デパス(エチゾラム)
- アモバン(ゾピクロン)
- ロラメット(ロルメタゼパム)
- リスミー(塩酸リルマザホン)
- レンドルミン(ブロチゾラム)
作用時間:中
- ロヒプノール(フルニトラゼパム)
- ユーロジン(エスタゾラム)
- ベンザリン(ニトラゼパム)
- エリミン(ニメタゼパム)
作用時間:長
- ダルメート(フルラゼパム)
- ソメリン(ハロキサゾラム)
このように、同じ睡眠誘導薬でも作用時間がそれぞれ異なり、使い方が変わってきます。
たとえば、「寝つきの悪さ」を解消するために使われる睡眠誘導薬は、「マイスリー」や「ハルシオン」などの作用時間が比較的短いものが使われ、「朝までぐっすり眠れない」という熟睡不足に対しては、「ロヒプノール」や「エリミン」など、作用時間が長いものが使われます。
睡眠誘導薬の副作用
- めまいやふらつき
- 頭痛
- 吐き気
- 寝起きの悪さ
- 日中ボーっとする
- 倦怠感
- 性欲低下
- 口やのどの渇き
睡眠誘導薬には、このような副作用や依存のリスクがあるため、服用する際は医師とよく相談し、用法容量をしっかり守るようにしましょう。
薬以外でできること
ビタミン剤
自律神経失調症の症状を改善するには、必要な栄養素を摂取することも非常に大切です。
症状緩和につながるビタミンには以下のようなものが挙げられます。
- ビタミンC・・・疲労回復、免疫力UP
- ビタミンB1・・・疲労回復、集中力UP、イライラ予防、便秘解消
- ビタミンB12・・・貧血予防、倦怠感の改善、肩こり腰痛の改善
- ビタミンE・・・抗酸化作用、更年期障害の改善、生理不順の改善、血行促進
ホルモン剤
更年期、妊娠中、出産後、月経の前後などに起こる不調に用いられるのが「ホルモン剤」です。
よく処方されるのは、「エストロゲン」や「テストステロン」で、イライラや冷えなどの症状を緩和します。
漢方薬
漢方は、自己治癒力や免疫力を上げて心と体のバランスを整えます。「飲んですぐ効く」というものではありませんが、副作用が起こる心配がほとんどなく、安心して続けていけるというメリットがあります。
自律神経失調症の症状改善に用いられる漢方
自律神経を整える漢方療法でもご紹介していますが、東洋医学では自律神経失調症を「気の乱れ」と捉えます。
このときの「気」とは、睡眠、活動、休息、食事、消化、代謝、排出などのサイクルと考えてよいでしょう。
これらのバランスを整えるという漢方の治療は自律神経失調症の症状に対して有効なことが多いそうです。
- 桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
ストレスによる精神不安や神経質の状態に用いられます。
- 柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
神経症、動悸、不眠などがある方に使用されます。
- 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
不安感や緊張感、イライラなどの症状に適応します。
- 柴朴湯(さいぼくとう)
気管支炎や咳の症状、不安神経症の方に用いられます。
- 加味逍遥散(かみしょうようさん)
不安やイライラ、更年期障害、月経不順などに用いられます。
- 抑肝散(よくかんさん)
気のたかぶり、イライラ、更年期障害、不眠に用いられます。
-
- 柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
不安、動悸、不眠、便秘などの症状に用いられます。
まとめ・薬の副作用や依存症に注意
以上、自律神経失調症で処方される薬や効果、副作用をご紹介しました。
これらの薬によって症状を和らげることができますが、副作用や依存症には注意が必要です。
とくに、薬を飲み続けることによってなかなか薬を止めることができなくなる依存症は、薬を断ち切るまでに非常につらい思いをすることがあります。また、途中で薬を減らしたり止めることでも離脱症状(頭痛や吐き気など)が現れることもありますので、こういったリスクをよく理解したうえで服用する必要があります。
薬を服用することに対して、これらの不安を覚える方は多いと思います。
そういった方はまず症状改善に役立つ栄養素が豊富に含まれている「サプリメント」を試みると良いかもしれません。
おすすめのサプリメントは【不安・憂鬱・緊張・ストレス】に!おすすめのサプリメントの記事でご紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
また、市販で買える薬については下記のサイトが非常にわかりやすいです。こちらも合わせて参考にどうぞ。
→MEDLEY
https://medley.life/diseases/54edb29f6ef458903585ce37/details/coping/otc/