いい人をやめる習慣を身につけ人間関係の悩みをなくす
責任感が強く最後まで物事を成し遂げ、他人のために尽力する・・・こういった価値観が私たちの深層心理に深く刻み込まれていると言います。
しかし、この考えは人間関係においてストレスの原因になりやすく、酷いときには自律神経失調症などの精神疾患や、「心の病」の原因にもなってしまいます。
その証拠に、日本人は先進国の中でも『うつ病』や『自殺率』がトップクラスに多いというデータがあります。すべての原因がこの考え方によるものではないとしても、日本人が古くからもつ「いい人の定義」が悩みやストレスの原因になっていることは多いと考えられます。
ここでは、日本人特有の価値観からもたらされる人間関係のストレスをなくし、精神疾患や自律神経失調症などを改善する方法をまとめてみます。
この記事の目次
「いい人」が自律神経失調症になりやすいと言われる理由
なぜ「いい人」は自律神経失調症になりやすいのでしょうか?
それは「ストレス量」に関係しています。
自律神経失調症は言わずと知れた”ストレス障害”の一つですので、毎日受けるストレスが多い人ほど発症しやすいという特徴があります。
「いい人」はストレスを感じる量が多い
たとえば「いい人」と「そうでない人」の2人が同じ仕事をしているとします。
1人は何も考えずに淡々と仕事をこなしますが、「いい人」はたとえ同じ仕事をしていても、以下のようなことを考えてしまう傾向があります。
- 「これは絶対に失敗をしてはいけない仕事だ」
- 「私がこれをしくじると多くの人に迷惑がかかってしまう」
- 「頼まれた仕事はきっちりと正確にやり遂げなければならない」
- 「この仕事が遅れると恥をかいてしまう・・・」
- 「失敗したらどう思われるかわからない」
これだけ真剣に仕事をする人は、周囲からも信用されているでしょうし、頼りになる存在かもしれません。しかし、この考えが本人を追い詰めてしまうことがあります。
もう1人の「そうでない人」に比べると、”プレッシャー”の量は比べものになりません。プレッシャーはそのまま「ストレス」になりますから、こんな調子で毎日を生きていれば、自律神経が疲れ切ってしまうのは仕方のないことだと言えます。
こういった方は、考え方の偏りを修正していくとともに、ストレスをうまく解消できるような生活習慣を身につける必要があるでしょう。
人はなぜいい人を演じてしまうのか
生真面目で自律神経失調症になりやすい人は、「周囲の期待に応えようとする」傾向があります。
こういった性格になる理由として、過去の出来事や幼少期の環境などが考えられます。
もっとも多いタイプが「親から期待をかけられ過ぎた」幼少期をもつ人です。
こういう幼少期を送った人は、他人から期待され、そしてそれに応えることで「自分という人間の価値と居場所」を見出すようになります。
心理学的にはこういったものを「承認欲求」といいます。
承認欲求とは「人から認められたい」と強く思う欲望のことで、適度であれば行動力の源になるので、ある程度は必要な欲求です。
また、社会には縦と横のつながりがあり、それぞれを認め合い自分の居場所を決める必要がありますから、承認欲求はある意味「本能」だともいえるでしょう。
このように人は、周囲に褒められ、自分の居場所を獲得するため、”いい人を演じる”ようになります。
しかしこの考えが行き過ぎると、「私はこうでなければいけない」といった偏った考え方になってしまい、それに反する出来事が起きた際に過度なストレスを受けることになります。
いい人を続けるデメリット
人間は不完全な生き物ですので、どんな人でも「失敗」はあるものですね。
しかし「いい人を演じる」人は、その失敗をなかなか許すことができない傾向にあります。周囲の人にとっては大した失敗ではなくても、本人にとっては一大事に感じてしまうのです。
承認欲求の強い人は、小さな成功にも過剰に喜びを感じますが、反対に失敗をしたときには、周囲の人の理解を超えるような落ち込み方をしてしまいます。仕事の成否が、その人の人格に関わると錯覚しているからです。
毎日がこのような状況だと、
- 疲れやすくなる
- 熟睡できなくなる
- いつも焦燥感を感じてリラックスできなくなる
- 便秘、下痢をしやすくなる
- 免疫力が低下し病気にかかりやすくなる
などの弊害が起きやすくなります。
いい人をやめるメリット
いい人でい続けようとすると、「失敗をしないか?」といつも緊張感に包まれた状態になってしまします。
この状態は、交感神経が活性化して興奮し、仕事を頑張っているつもりが、逆に集中力を欠いてしまう状態になってしまいます。
もし、「いい人」をやめてみると、どんなメリットがあるのでしょうか?
- 長時間働いても疲れにくくなる
- 仕事に集中できてミスをしにくくなる
- 心に余裕ができることで、人間関係もうまくいく
- 失敗を怖れなくなりチャレンジ精神が湧いてくる
- 夜ぐっすり眠れ、爽快な朝を迎えることができる
思い切って「いい人」をやめると、仕事そのものが楽しくなることで好循環が起こります。
「いい人」は、ストレスを自宅に持ち帰ってしまうことで、就寝時にも緊張感を残したままになり、睡眠障害を起こしがちです。
「いい人」をやめれば、仕事とプライベートにメリハリができ、夜もぐっすりと眠れ、健康を取り戻すことにもつながります。
いい人をやめるためのコツ
みなさんもご存じのとおり、人の性格はなかなか変えられるものではありません。
そのため、まずはかんたんな方法から始め、徐々にステップアップしていくことをおすすめします。
人の人生に介入しない
他人を優先しすぎて、つい過剰に気を遣ってしまうことはありませんか?
よかれと思ってしたことでも、結果としてその人にとってはおせっかいになってしまう可能性があります。
たとえば怒っている人がいると、機嫌をとりながら話したり顔色をうかがいながら話してしまうものですが、これは「気の遣いすぎ」なのかもしれません。
他人に起きているすべてのことに介入する必要はありません。それは相手の課題であり、自分の課題ではないからです。
この考えは「アドラー心理学」を解説した書籍「嫌われる勇気」でも述べられており、以下のように記されています。
他者の課題を抱え込んでしまうことは、自らの人生を重く苦しいものにしてしまいます。
まずは、「ここから先は自分の課題ではない」という境界線を知りましょう。そして他者の課題は切り捨てる。それが人生の荷物を軽くし、人生をシンプルなものにする第一歩です。
他者の課題を切り離して考えられるようになると、人間関係の悩みやストレスが大幅に減ります。興味のある方はぜひ試してみてください。
承認欲求を捨てる
先ほども書いたように、「いい人」は「承認欲求」が強い傾向がありますので、これもできるだけ捨て去る必要があります。
承認欲求を捨てるということは、簡単に言えば「他人に認められなくてもよい」と思考のベクトルを変えるということです。
承認欲求を捨てると、他人に褒められることを期待しなくなり、また失敗を怖れることもなくなります。
こうすることで毎日受けるストレスやプレッシャーが半減し、何事にも積極的に行動できるようになります。
本音を言ってみる
そして最後に、「いい人」を演じる人は人前で「本音が言えない」ということも共通しています。
辛いことを辛いと言えずに頑張り過ぎ、そして限界が訪れてしまうのです。
この場合の”本音”とは”弱音”とも捉えることができます。
おわりに
日本発祥の実績のある精神治療法に「森田療法」があります。
その創始者である森田正馬氏は「あるがままを受け入れる」ことの大切さを説いています。
精神疾患や自律神経失調症になってしまう「いい人」は、ある意味自分を殺して何かに成り切ろうとすることで無理をしてしまうことが多いようです。
「あるがまま」は自分自身の本当の姿であり、作った自分を捨てて本音と向き合うことが「いい人」を改める第一歩なのかもしれません。
この記事のまとめ
- 「いい人」は自分を追い詰めることで自律神経失調症にかかりやすくなる
- 「いい人」は”承認欲求”が強いために「いい人」を演じてしまう
- 「いい人」は疲れやすく睡眠障害や便秘などになるなどのデメリットがある
- 「いい人」をやめると集中力がついたり、心に余裕ができることで人間関係がよくなるなどのメリットがある
- 人間関係のストレスをなくすには、『人の人生に介入しない』『承認欲求を捨てる』『本音を言う』などを実行する