適応障害が原因で自律神経失調症になるケース│克服するための考え方は?
『適応障害』という言葉を聞いたことがある方は多いかと思います。
最近では著名人が適応障害だったというニュースも耳にするようになり、広く知られるようになりました。
この適応障害が原因で自律神経失調症になるケースもあります。
このページでは、適応障害とは何なのか、また自律神経失調症との違いはどのようなものなのかについてまとめてみたいと思います。
この記事の目次
適応障害とはどんな状態?自律神経失調症との違いは?
適応障害とは、ある特定の場面においてうまく順応することができず、それが強いストレスとなってさまざまな症状の原因となるこころの病です。
『うつ病』や『自律神経失調症』と同じような扱いをする方もいますが、これらはまったく違うものです。
適応障害の場合、症状が出るのはストレスの対象となる環境にいるときだけです。たとえば自分が所属している課にいるときだけとか、ある特定の人と一緒にいるときだけに症状が現れます。そのため、ストレスがかかるシチュエーションから一歩外に出た途端に症状が消えることもあります。
誰にでも苦手な場面はあるものですが、適応障害になった本人からすればただの『苦手』という言葉だけで片づけられるものではありません。強い恐怖感や不安感によってその場から思わず逃げ出したい衝動に駆られるほど、強いストレスがかかります。
こういったネガティブな感情は意識するほど日に日に増大してしまうものです。最初は「苦手だなぁ」という気持ちで片づけられたようなことでも、何度も「嫌だ」と感じることで次第に耐えきれないほどのストレスになることもあります。
これに対しうつ病や自律神経失調症は比較的長期にわたって症状に悩まされます。ストレスの対象から身を引いても、すぐに症状が治まるわけではありません。
うつ病や自律神経失調症の症状は「脳内物質」や「自律神経の働き」が正常でなくなることで発症しますので、これらの働きを正常に戻すために生活習慣や思考の歪みを改善することが必要になります。
具体的にいうと、仕事との付き合い方やストレスコントロール、物事の考え方や捉え方などを見直すことが必要となるでしょう。もちろんこれらを瞬時に変えることは容易なことではありませんので、症状を克服するまでにも時間がかかることが多いということになります。
適応障害が原因で自律神経失調症になるケース
先ほどご説明したとおり、適応障害は特定の場所や人に対して強いストレスを感じてしまう病です。
たとえば仕事の環境や人間関係において自分の中で絶対に許せないことがある場合。
- 「この人と一緒にいるのは害でしかない(一緒にいるのが苦痛で仕方がない)」
- 「スピーチが恐怖で仕方がない、自分がスピーチすることは絶対にありえない」
- 「この配属先は私にふさわしくない、向いていない、できるわけがない」
このような考え方が強くなればなるほど、その場にいることが苦痛で仕方がなくなるでしょう。この苦痛が強いストレスとなり、徐々に精神や肉体を蝕んでいきます。
強いストレスは興奮や緊張をつかさどる交感神経を刺激し続け、次第にこの緊張状態から抜け出せない体質になってしまいます。交感神経が優位な状態が続くということは、つねに不安や緊張、憂鬱といった症状が続いている状態です。夜中や朝方に覚醒してしまうのもこの交感神経が優位になり続けてしまうことで起きる症状で、自律神経失調症の代表的な症状のひとつとして考えられています。
こうした適応障害が自律神経失調症につながるケースは少なくないようです。
適応障害から自律神経失調症になった場合の克服ポイント
では、適応障害によって自律神経失調症になってしまった場合はどのようにして克服すれば良いのでしょうか。
当然、心療内科や精神科に行って診てもらうことが必要な場合もあるかと思いますが、ここでは自分で克服するために抑えておきたいポイントについてお話ししたいと思います。
1.会社でのストレスが原因になっている場合は休職も考える
適応障害は会社のストレスが原因になる場合が多いようです。
仕事内容がどうしても合わなかったり新しい人間関係にうまく馴染めなかったりと、原因は人それぞれ異なりますが、こういった状態が続くことで日常に影響が出るようなストレス症状が現れるようになります。
- 集中力・記憶力が低下する
- 仕事のミスが増える
- 今までできたことがうまくできなくなる
- 人と関わることが嫌になる(一人になりたい)
- 動悸や息苦しさ
- 気持ち悪い・吐き気
このようなストレス症状が現れているときは、とても正常な考え・判断ができる状態ではありません。また、こういった精神症状が出ているのにも関わらず我慢したりそのまま放っておくと、他の精神疾患に発展してしまう恐れもあります。
そのため、適応障害の克服を目指す際はこのストレスの原因となっている環境から一旦身をひき、正常な心身を取り戻すことが最優先となります。当然働きながら十分な休息をとることは困難なことが多いため、「休職する」ことが必要になることもあります。
休職の手続きや復帰までの流れについては以下の記事を参考にしてみてください。
➡【自律神経失調症の休職】必要性・期間・診断書・傷病手当・復帰までの道のり
もし休職せずに働きながら克服を目指す場合は、ストレスの原因となっている環境からできるだけ距離を置く必要があるでしょう。自分の悩みや症状を上司に相談し、可能であれば以下のような方法でストレス軽減を図りましょう。
- 異動させてもらう
- 仕事内容を見直してもらう(業務を減らす)
- 勤務時間を変えてもらう
- 残業をなくしてもらう(減らしてもらう)
2.物事の考え方や捉え方を変える
ストレスから離れることで少しずつ健全な心身が戻ってくるはずです。しかし回復するのはあくまでも「少しずつ」だということを忘れないようにしていただきたいと思います。自律神経失調症を克服するためにはある程度の時間が必要になります。
なかなか症状が良くならなくても決して焦らずに、「少しずつだけど必ず良くなる」と信じることが大切です。
➡自律神経失調症が治るまでにはある程度の期間が必要。焦りは禁物
このことを肝に銘じて、ストレスをうまくコントロールするために今までの考え方や捉え方を変えていきます。
たとえば人間関係において耐え難いストレスがあった場合、
- 「どうすればこのストレスを軽減できるか」
- 「こういう考え方ならうまくやれるかも」
- 「こんな捉え方もできるかも」
などと、色々な視点から考えてみることで意外な解決策が見つかることがあります。今までの考え方にはあえて固執せず、「あの人ならどう対処するだろう?」「自分もこうすればうまくいくかな?」とまず柔軟に考えてみることが大切です。
もちろん今までと違った考え方はすぐに身につくものではありませんので、うまくいくようになるまではそれなりに時間はかかるでしょう。ですが諦めずに意識して行うことで色々な考え方や捉え方が理解できるようになり、今までストレスに感じていたようなことでも比較的すんなり受け入れられるようになっていきます。
一度でもこういった人間的な成長を体験すると、また別の問題が降りかかってきたときにでもうまく対処できる強さが身につくため、また同じようなことで悩むことがなくなります。
自分の思考パターンを変えることは容易なことではありませんが、意識して「多方面から考えてみる」ことを続けることで、少しずつ柔軟な考え方ができてくるはずです。
まずはできることから始めよう
一番怖いのは、症状が悪化したり他の病気に発展してしまうことです。当然悪化すればするほど完治までの期間も長引いてしまうでしょう。
こういったストレス症状は数値として現れるものではありませんので、はっきりと症状の段階がわからないものです。つい「まだ大丈夫」「なんとかなる」と思ってしまいがちですが、少しでも早く克服のためにできることを始めてみることをおすすめします。