自律神経に効く運動・ストレッチで不調を解消する
自律神経失調症は交感神経と副交感神経のバランスが崩れることから起こり、精神的なものから生活習慣、栄養不足などさまざまな原因が考えられます。
中でも、症状と原因の両方に大きく関わっているのが、『ストレスによる心身の緊張』です。
緊張が続いたことで自律神経失調症になることもあれば、逆に自律神経失調症が原因で体中がこわばり、緊張症状が表れることもあります。
これを逆に考えると、ストレッチやスポーツなどの運動により身体の緊張をほぐすことで、自律神経の緊張モードを解除することができるとも考えることができます。
現代人の運動不足は深刻なものがあり自律神経失調症の要因の一つとして問題視されていますので、症状が悪化する前に何らかの手を打つ必要があるでしょう。
この記事の目次
激しい運動ではなくリラックスを意識した運動を
運動と言ってもさまざまな種類がありますが、身体を酷使するハードなスポーツは自律神経のメンテナンスには不向きと言えます。
身体の緊張をほぐすことが目的ですので、そこに精神的な「気持ちよさ」や「爽快感」がなければ逆効果になることもあります。ストレスを感じるほど長時間続けないことも大切です。
また、運動やストレッチと並行して、自律神経の働きを正常化させるような生活習慣を身につけることが大切です。
-自律神経に良い生活習慣-
副交感神経を高める運動
自宅にいながらにして、効果的に副交感神経を高める運動があります。
副交感神経はリラックス時に働きますので、腕や手、胴体などをブラブラと振るような動きが効果的です。
腕振り運動
- ますぐ立って膝を少し曲げます。
- 手を前後にブラブラと振ります。
これを疲れない程度に数分振り続けます。
スワイショウ
ヨガに匹敵すると言われる健康法「太極拳」には、基本運動として行われる全身をリラックスさせて副交感神経を高める運動があり、「スワイショウ」はそのうちの一つです。
- まっすぐに立って膝を少し曲げます。
- でんでん太鼓の要領で体をひねって腕を大きく回転させます。
- 回した腕が反対画の骨盤に軽く「トンッ」と当てるようにすれば、さらに振動で体がほぐれていきます。
これを疲れない程度に数分続けます。
これらの運動は非常に単調な動きで誰でも簡単にできますが、周期的に行えるリズム運動で効果的にリラックス状態を作り出すことができます。
イライラしたり緊張感の強いときなどにとくに効果的です。
不安や憂鬱の解消に良い運動
不安や憂鬱な気分になるとき、ストレスによって脳内ホルモンの「セロトニン」が大量に消費されて不足している状態になっています。
セロトニンは人の感情のコントロールや自律神経の調整をする役割がありますので、不足することで自律神経失調症の原因にもなってしまいます。
不安や憂鬱を抱えている場合、このセロトニンを活性化させることが、直接的な解決法になると言っても過言ではありません。
セロトニンを活性化させるには「一定リズムの繰り返し運動」と「深い呼吸」を組み合わせると良いことが医学で証明されています。
この2つの条件をクリアするのが「ゆったりリズミカル・ウォーキング」です。
運動神経には個人差がありますので、数字的な決まりはありませんが、できるだけゆったりと息が速く浅くならないスピードで歩くのがコツです。
単なる「散歩」と違うところは、リズミカルに・一定スピード・一定リズムで歩くことです。
人間の脳は一定周期でリズムを刻むことでセロトニンを一時的に増やす性質があり、「貧乏ゆすり」などは無意識にこれを行っているものだと考えられています。
ゆったりとリズミカルにウォーキングを続けると、5分後にノルアドレナリン、15分後にドーパミン、20分後にセロトニンが分泌され始めます。
これによって感情が徐々に切り替わっていき、不安や憂鬱といったネガティブな状態から抜け出ることができるのです。
【姿勢を矯正するストレッチ】
姿勢と自律神経には深い関わりがあります。
「良い姿勢」こそが最も身体がリラックスしている状態であり、背中を丸めたような姿勢は一見楽に見えても、実は大きく緊張を強いられている箇所があります。
自律神経に関係した筋肉に「脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)」があります。
これは背骨に沿って配置された、身体全体を支える筋肉です。
背中から見ると、背骨の両脇にこんもりと山形状で、腰から首まで伸びている筋肉を言います。
人がまだ文明を持たなかった頃、敵と遭遇した際、戦うにしろ逃げるにしろ背中を丸めて準備行動を起こす必要がありました。
これは人だけでなく動物全般がそうなのですが、この時、「全身を最も緊張できる状態にしている」と言われています。
楽をしようと背中を丸めてしまった状態が実は「緊急事態」の時と同じ姿勢になっているのです。
この部分をリラックスさせることで、副交感神経を優位にし、緊張をほぐす効果が期待できます。しかし、長年にわたりクセづいた姿勢は、思うように正しい形にはなってくれないこともあります。
こういった場合、背骨を伸ばすようなストレッチが必要になります。
四つん這いになり、犬の背伸びのような形でストレッチをすると、それだけでかなりの爽快感が得られ柔軟性を取り戻せます。
姿勢を正す方法はいくつかありますが、バレエの「白樺立ち」のポーズの場合、強制的に背骨と全身の骨、関節の位置を正しい形にする優れた方法です。
やり方は、
これだけです。
はじめは腰が痛くてバランスが取れませんが、しだいに腰が柔らかくなり、脊柱起立筋が緊張のない状態になります。
肩こり・首こりに効くストレッチ
自律神経は頚椎と頭蓋骨がつながる部分に集まっていますので、首や肩の周辺がこると圧迫されてしまいます。
自律神経失調症と肩こりや首こりは代表的な症状ですので、この2ヶ所をストレッチすることは大切なことです。
首は大小8種類(僧帽筋、胸鎖乳突筋・斜角筋など)もの筋肉群で構成されています。
首のこりをとるには、これらすべてを柔らかくストレッチする必要がありますが、専門家の指導がない場合、直接首をグイグイと引っ張るようなストレッチは非常に危険な行為だといえます。
首の8種類の筋肉のほとんどが肩にもつながっていますので、肩の柔軟体操をすることで、間接的に首のこりをとることができます。
首こりと肩こりに効果的なストレッチのやり方は以下のとおりです。
- 足を軽く拡げて立ち、両腕を肩の高さまで上げ、正面から見て「大の字」の形になるようにします。
- 右腕を内旋(左回し)し、同時に左腕を外転(右回し)に回します。
- 数回続けたら、今度は反対に右腕を外旋、左腕を内旋します。
- これを約5分~10分ほど続けます。
左右反対方向に腕を回転するだけですが、血流も上がって筋肉群と腱ほぐれ、肩周辺と首にたくさんの血液流入してこりが改善されます。
腕がだるくなったら一度休憩をいれましょう。
ストレス解消に良いストレッチ
うつ病などの精神疾患になっている人は、「肘」と「膝」に硬直が見られます。
人が過度なストレスを受けると、動物的な防衛本能が働いて肘と膝に知らず知らず力を入れてしまうためです。
そのため、職場や学校などでストレスを感じたときには、肘と膝を伸ばすストレッチ運動をすると良いストレス・ケアになります。
肘のストレッチ
- 右腕をまっすぐに伸ばして手のひらを反らせます。
- 左手で反らした右の手のひらを握って手前にグイグイと引きつけてさらに反らせます。
- 反対側も同様に行い、気持ち良い程度に数回交互に繰り返します。
膝のストレッチ
- 壁や椅子の背もたれなどに両手をつき、体を安定させます。
- 左足を曲げ、右足を後ろにずらせて行って伸ばし、「アキレス腱を伸ばす運動」のように膝裏を意識して伸ばします。
- 足を入れ替えて今度は左膝の裏側を伸ばします。
- こちらも気持ち良い程度に複数回行います。
これらの運動は肘と膝の硬直を取るだけでなく、手のひらや足の裏など、小さなツボが集中している部分を刺激しますので自律神経へ良い影響を与える効果もあります。
副交感神経を高めるストレッチ
ヨガの多くは副交感神経を高めるものとして知られています。
ヨガには無数のポーズがありますが、とくに睡眠前に行うと副交感神経が高まるポーズが「チャイルドポーズ」と呼ばれるものです。
- 正座で座ります。
- そのまま体を前に倒していき、腕を床につけて前にずらしていきます。(ちょうど、イスラム教の礼拝時に行う、大きくお辞儀をするような姿勢)
- 骨盤が苦しい場合は膝を少し外側に開いても大丈夫です。
- 背中をピンと反らし、軽く伸ばすようにします。
- 息が上がらない程度に、何度かお辞儀を繰り返します。
背中部分の緊張が速やかに改善され、副交感神経が高まりやすいヨガのポーズです。
【おわりに】
運動やストレッチで身体の緊張をほぐすことが自律神経失調症の改善と予防に役立つことは分かっており、成人女性に対するアンケートでは、ウォーキングやジョギングを習慣づけている人よりも、しない人の方が、精神疾患や自律神経疾患が30%以上も多いことが明らかになっています。
たとえ短時間でも、毎日続けることで確実に効果が出てくるはずですので、ぜひ一度試してみてください。