精神的ストレスによる自律神経失調症を根本から解消するための考え方
自律神経失調症の最大の原因は「ストレス」だといわれています。
人が持っている”ストレス耐性”の限界を超えることで自律神経の働きが悪くなってしまうのが、自律神経失調症の正体です。
このストレスには種類があり、すべてのストレスが病気を引き起こすわけではありません。
問題なのは「ストレスの受け取り方」であり、小さなものごとの捉え方の違いによって、健康状態が左右されることもあるということです。
ここでは、自律神経失調症の原因となってしまう精神的ストレスの本質と、毎日の生活の中でストレスに負けてしまわないための考え方や工夫のしかたなどを解説します。
この記事の目次
自律神経失調症の原因となるストレスの種類
ストレスは大きく分けて「精神的なストレス」「肉体的なストレス」に分類されますが、ここでは精神的ストレスに焦点を当ててお話しします。
仕事や学校に行ったり、用事を済ますということもストレスのひとつとなります。しかし、これらは誰でもこなしていることであり、こういったストレスがすぐに自律神経失調症につながるわけではありません。
「生活の中での負荷」は、それをやり遂げることで達成感や開放感が得られたり、自分のための成長につながったりと、多くの恩恵を受けることになります。
しかし、自律神経失調症になるようなストレスは、いわゆる「悩み」「不快感」「焦燥感」といった”ネガティブな心理状態になるもの”のことで、そしてそれらが「長期化」することで重いストレスへと変貌します。
たとえば、職場や家族内での「人間関係」などは、慢性化・長期化する類のものです。人間の精神は、短期的なストレスには強いため、それを乗り越えようとする意欲も生まれますが、長期的なストレスに対しては非常にもろいものなのです。
またストレスは「蓄積する」という性質があります。一つ一つのストレスが小さくても、それらを解消せずに放置しておくと、しだいに大きなストレスになっていきます。
いくつかの悩み事を同時に受けたときなどにはパニック状態になりやすいものですが、これもストレスが短期的に蓄積されたことによる、脳の混乱だといえるでしょう。
精神的ストレスをまともに受けないためにできること
自分の身に起こることを「重いストレス」としてしまうかどうかは、「物事の捉え方」によって変わってきます。
以下にご紹介するストレス回避方法を参考にしてみてください。
ストレスに対するイメージを変える
どのような環境で生活していても、自律神経失調症になりやすい人となりにくい人がいます。これは、「ストレスに対するイメージ」が違うことから起こる現象だといえます。
ストレスは決して悪い面ばかりではありません。小さなストレスを克服することで、能力が身についたり、周囲に認められたり、もっと分かりやすくいうならば経済的に豊かにもなるのです。
人が生まれてから大人になるまで、まったくストレスなく生きてきたとすれば、その人の成長レベルも非常に低いものとなります。
たとえば、会社での仕事を「自分のスキルアップにつながる」「自分のためになる」というイメージを持っていると、そのストレスは前向きな原動力に変えることができるでしょう。
しかし反対に、「なぜ自分がこんな仕事をしなくてはならないのか?」「不公平だ」「辛いだけだ」という捉え方をしていると、仕事が終わってからもその感情を引きずり、自律神経失調症になりやすい”長期的ストレス”になってしまうのです。
簡単にいうならば、ストレスを「不幸・障害」とイメージせず、「乗り越えるべき逆境」とイメージすることが大切、ということになります。
完璧主義を捨て、楽観的に考える
完璧主義の人は、楽観主義の人に比べると自律神経失調症を始めとする精神疾患になりやすいといわれています。
完璧主義の人は人一倍努力をし妥協もしないので、ある程度会社でも成功を収めることが多いようですが、その分強いストレスがかかる場面も多くなります。
性格的に頼み事を断れなかったり、必要以上に周囲の評価を気にしたりと、”過度な意識”を持つことでも、精神を疲れさせてしまうのです。
思考の性質を「楽観的」に変え、自分と周囲の小さなミスを許せる心理状態に変えることが大切です。
何事にも感謝の気持ちを忘れない
自分に起きたことをプラスに捉えるか、マイナスに捉えるかでもストレスの度合いは違ってきます。
不平不満をできるだけ持たず、その代わりに「感謝の気持ち」を持つ習慣をつけると、ストレスは溜まりにくくなります。
この例で分かりやすいのが、自分以外の人に食事を作ってもらったときです。
出された食事を、”自分の味の好み”で評価しはじめると、合わない食事はストレスの元になるでしょう。しかし、「自分のために食事を用意してくれた」と感謝の気持ちを持つことで、過度なストレスは感じずに済みます。
本当に飢えているときやお金に困っているときならば誰でも感謝の気持ちを持てるのですが、恵まれた環境に居続けるとそういった感情はついつい忘れてしまいがちです。
ふだんからあらゆるものに対して「感謝の気持ちを忘れない」ことが、ストレスを作らず、しいてはそれが自律神経失調症の改善にもなるのです。
参考:不安や憂鬱の取り除き方│不平不満や愚痴をやめ、感謝を口にする
ストレス解消の習慣を日常生活に取り入れる
自律神経失調症を緩和させるには、物事の捉え方を変えるだけではなく、「積極的な行動を心がける」ことも大切です。
自律神経失調症を含めた精神疾患を治療する専門医でも、精神状態を健康に保つためのさまざまな行動方法を推奨しています。
効果的なものには以下のようなものがあります。
運動
自律神経失調症の症状は、心と体の両方に現れます。
肉体と精神は人が思っている以上に密接なつながりがあり、「体を動かすこと」によって精神状態を大きく変えることも可能です。
運動をして体温を上げ、筋肉組織を活性化させると、自律神経は柔軟性を取り戻しやすくなります。
過去にスポーツの経験をしていた人であればこの運動による精神への効能や恩恵を知っているのですが、運動経験があまりない人は「精神的に辛いから」と逆に活動を止めてしまう傾向にあります。しかし、結果としてこれが引きこもりの原因となったり、うつ状態へ悪化してしまうようなこともあるのです。
ストレスを解消する運動を取り入れるときには、次のようなことには注意しましょう。
- あまりハードな運動はしない
- 回数や日数を決めない
- 心地よい程度で運動する
精神科の医師が推奨するのは「ウオーキング」や「ジョギング」などです。
とにかく、楽しむことがストレス解消には大切なことなので、頑張り過ぎないように注意しましょう。
瞑想
ここ数年、ストレス解消などの観点から注目されているのが「瞑想」です。
瞑想というと、ヨガの修行者や座禅などを連想することから宗教的なイメージもあるのですが、最近では科学的な検証が進められ、医学的にも効能が認められてきています。
精神科治療のデイケアで取り入れている医療施設も増えつつあり、一定の効果を上げているようです。
人が瞑想をすると、脳では「α波」という脳波が出現し、精神安定に重要な脳内ホルモン「セロトニン」が分泌されます。
この”セロトニン”という脳内ホルモンは、「自然の鎮静剤」ともよばれるもので、ストレスを打ち消して精神と自律神経を正常に保つ能力を持っています。
精神科で処方される、多くの向精神薬や抗うつ薬は、このセロトニンを脳内に満たすことで症状を緩和させます。
瞑想には、そのセロトニンを自分の体内で作り出せる効果があるのです。
参考:自律神経失調症の改善のために瞑想が役立つ5つの理由。メリット・効果・やり方まとめ
参考:自律神経失調症の治療に欠かせない『セロトニン』│増えるメリット・減るデメリット・増やし方など
人とのコミュニケーション
人は「社会性動物」に分類されています。
社会性動物とは、複数の個体が群れを作り、社会を構築して生きる動物のことです。こういった社会性動物は、「孤独」をもっとも恐れるといいます。これは、群れから離れたら死を意味していた太古のDNAから続くものです。
そして、その反対に人の心を癒やしてくれるのが「コミュニケーション」です。
人が他者とコミュニケーションを取った際に満足のいく関係性が築けていることを確認できると、「オキシトシン」という幸福を得られるホルモンが分泌されます。人見知りの人や、独りでいることが好きな人も、完全な孤独が好きなわけではありません。それは過去のトラウマや、考え方の偏りによってそう感じているだけなのです。
できるだけ人と接する時間やコミュニケーションをとる機会を増やす意識を持つことは大切です。
参考:ストレスを味方につける方法~定期的にあえて負荷・刺激を与えることも大切~
今回ご紹介したものは、自律神経失調症の大きな原因である「精神的ストレス」についてです。精神的ストレスの多くは精神科で治療をするよりもむしろ、”セルフケア”が重要になります。
自分自身の性格などを十分に観察し、ストレスを溜め込まない生活を心がけることが大切です。
〈まとめ〉
- 自律神経失調症は「長期的・慢性的なストレス」が原因
- ストレスをまともに受けないためには「ストレスに対するイメージを変える」「完璧主義をやめる」「感謝の気持ちを忘れない」ことが大切
- 「運動」「瞑想」「人とのコミュニケーション」がストレスの解消になる